7月9日・10日の2日間、都議会総務委員会のメンバーにて、群馬・長野方面へ視察に行って参りました。
9日は長野県庁にて信州やまほいく認定制度についての説明を、10日は現地視察として
学校法人いいづな学園 子どもの森幼稚園(未就学児教室つぼみルーム)へ伺いました。

長野県が2015年から取り組んでいる「信州やまほいく」は、自然の中での保育・幼児教育を推進する認定制度です。
制度の考え方や運用について説明を受けた翌日、その理念が実際にどう現場で息づいているのかを見るため、園を訪ねました。

🔲大自然の中で、目を輝かせる子どもたち
飯綱高原、標高1,000メートルを超える豊かな森に囲まれた園庭で、子どもたちはのびのびと目を輝かせて遊んでいました。
どろだらけになりながら滑り台やアスレチックを楽しんだり、コンクリートブロックを組んだかまどで飯盒を使ってご飯を炊いたり、カレーを作ったり。
既製品の遊具ではなく、大人が手をかけて作った環境の中で、子どもたち自身が考え、力を合わせて体を動かす姿がとても印象的でした。

🔲「安全にしすぎた環境が一番危ない」
視察の中でお話を伺い、特に心に残ったのが、園の安全に対する考え方です。
危険には二種類あるといいます。
一つは、子どもの成長・発達に必要な「冒険や挑戦の対象としての危険」。
転んで擦り傷を負う、といった、子ども自身が認識し、自分で避けられるものです。
もう一つは、植物アレルギーや野生動物との遭遇など、子どもの力では避けようがない、冒険の価値とは無関係な事故のリスクです。

園ではこの二つを明確に区別した上で、前者については「危ないからやっちゃだめ」とはなるべく言わない方針をとっているそうです。
安全にしすぎた環境で遊ぶことがかえって一番危ない、行き過ぎた安全は子どもの判断力や危険回避能力を奪ってしまう、という考え方に強く共感しました。
子どもは「危ない」と感じるものに出会ったとき、どうすればそれを乗り越えられるかを自分の頭で考え、自分の力量を知っていく。
そのプロセスこそが、本当の意味での安全につながるのだと感じました。

🔲幼児期は「大きな木の根っこ」
説明の中で紹介されていた「幼児期は大きな木の根っこ」という考え方も印象的でした。
小学校低学年までは非認知能力を土台に、小学校高学年・中学生では認知能力と非認知能力が絡み合いながら育ち、高校・大学でさらに積み上がっていく。
その一番の根っこにあたる乳幼児期にどれだけ豊かな経験を積めるかが、その後の育ちを大きく左右するという話です。
やろうと決めたことを諦めずに没頭し、試行錯誤する力。自分で考え、動き、遊ぶ主体性。

人に相談し、頼れる対人関係能力。
うまくいかないときにネガティブな気持ちを前向きに切り替える臨機応変力。
こうした力を、日々の自然の中での遊びを通じて育んでいるとのことでした。
また、幼少期の経験の中でも特に一生涯の記憶に残りやすいのは、視覚や聴覚ではなく、味覚・嗅覚・触覚だという話も印象的でした。
映像や音声の情報にあふれる今の時代だからこそ、五感を使ったリアルな実体験の大切さを改めて感じました。

🔲卒園児の追跡調査が示す、確かな成果
今回の視察でもう一つ大きな学びとなったのが、こどもの森幼稚園の卒園児を対象にした追跡調査の結果です。
2023年のこども環境学会で発表されたこの調査は、平成18年から平成22年にかけての卒園児(現在19〜22歳の大学生世代)を対象に、Webアンケートで実施されたものです。
内閣府や日本財団による同世代の全国調査と比較すると、以下のような結果が示されていました。

⚪︎「自分の親から愛されていると思う」(あてはまる):84.6%(全国31.0%)
⚪︎「自分には自分らしさというものがあると思う」(あてはまる):56.4%(全国29.8%)
⚪︎「その場に合った行動がとれる」(あてはまる+どちらかといえば):94.8%(全国62.9%)
⚪︎「誰とでもすぐ仲良くなれる」(あてはまる+どちらかといえば):79.5%(全国42.9%)
⚪︎「自分で国や社会を変えられると思う」:38.5%(全国18.3%)

自己肯定感、対人関係構築力、社会参画への意識、いずれの項目でも、全国平均を大きく上回る結果となっていました。
統計的な有意差までは確認されていないとのことでしたが
幼児期の自然の中での実体験が、その後の人生の土台になっているということを、数字の面からも実感できる貴重なデータでした。

🔲東京都ではどうする?
長野のような広大な森を、そのまま東京に持ってくることはできません。
ただ、同じ東京都内でも事情は一様ではないと感じています。
多摩地域であれば、まとまった緑地や里山を活かして、長野のようなスタイルに近い自然体験を取り入れることも十分可能だと思います。
一方で、緑地が限られる区部では、同じやり方をそのまま持ち込むのは現実的に難しいというのが実感です。
区部では、園庭の一角や近隣の公園といった限られたスペースの中で、泥んこ遊びや畑仕事など、身近な自然に触れる機会をどれだけ工夫して作れるかが鍵になります。

季節の変化を五感で感じる経験を、コンクリートに囲まれた環境の中でもいかに積み重ねられるか。
多摩島嶼部と区部、それぞれの環境に合ったやり方を、分けて考えていく必要があると感じています。
あわせて、区部で特に喫緊の課題となるのが暑さ対策です。
ヒートアイランド現象も重なる近年の猛暑の中で、外遊びの時間や内容をどう確保していくかは、自然の中でのびのびと過ごす経験の大切さと表裏一体で考えなければならないテーマです。
子どもたちの安全を守りながら、それでも屋外での実体験の機会を減らさない工夫を、現場と一緒に考えていきたいと思います。

北区をはじめ、東京の子どもたちにも、自然の中でのリアルな体験の機会をどう届けていけるか。
今回の学びを、今後の政策活動にしっかりと活かしていきたいと思います。
#信州やまほいく#森のようちえん#子どもの森幼稚園#幼児教育#都議会
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